スタッフのおすすめ
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嚙みあわない会話と、ある過去について
- 著者:
- 辻村 深月/著
「嚙み合わない会話」と「ある過去」とはどういう意味?と
読み始めてみると、想像通り「わ~」という気持ちになる本でした。
登場人物たちの気持ちが嚙み合わない短編4編。
でもふと思うんです。
そもそも会話って嚙み合うものなのでしょうか?
言い間違いや、思い込みで意思疎通が出来なくて、
誤解してたなんて事わりとありますよね。
だからなのかページをめくるのをやめられなくて、
気付けばあっという間に読み終わってしまう1冊でした。 -
ありえないほどうるさいオルゴール店
- 著者:
- 瀧羽 麻子/著
ありえないほどうるさいオルゴールの音ってどんなのだろう?
そこのオルゴール店の店員さんは特殊な意味で耳が良いそうで、
お客様が希望すれば一人一人に曲を選んでくれるそうなんです。
見た目も音も可愛いオルゴール。
それが沢山並んでるお店を想像するとワクワクしてきませんか?
もし自分が特別な一曲を選んでもらえたなら、どんな気持ちが味わえるんでしょうか。
そんなお店、現実にあればいいのに。 -
本書は、国会でその存在が取り沙汰されて話題になった、自衛隊による「イラク日報」の一部を書籍化したものです。
イラクに派遣された自衛隊員によって書かれた日報には、紛争地帯にいるとは思えないほど人間らしい日常が描かれています。
もちろん、機密事項や個人情報などは黒く塗りつぶされていますが、正直「なぜこの本がそれほど問題に?」と思うほどです。
普段テレビや新聞では見ること、知ることのできない自衛隊や他国の軍の様子が伺えて面白かったです。
しかし、実際現地で取材されたことのあるジャーナリストによるあとがきや、資料として付いている小冊子に書かれている解説を読むと、自分はその物事の一面しか見ていないことに気づかされました。
そして読み返して、その”人間らしさ”が持つ危うさを改めて知ることが出来ました。
また、本当に読まれてはいけないことは”黒”ではなく、その存在すら消されているのであろうことも。
硬いことを書きましたが、日誌自体の内容はほのぼのとしていて面白いです。
ただ、基地内にいる自衛隊員の目から見たイラクと、現地を取材したジャーナリストの目から見たイラク。
それぞれが違うように、一つの物事を多角的な面から調べ、知ることの大切さに気づかされた一冊です。 -
樽とタタン
- 著者:
- 中島 京子/著
”団地”という言葉が、普通に会話に出ていた年代の人にはどこか懐かしさを覚える小説です。
喫茶店の樽の中を放課後の自分の居場所にしていた、タタンと皆から呼ばれる少女。
その少女の眼を通して語られる、店の常連たちの姿と彼らとの会話。
記憶の中のそれは鮮明なようでいて、どこか曖昧でちぐはぐだったりします。
大人になった彼女にはそれが分かるけれど、その当時の彼女にとっては本当に起こっていたこと。
自分の中にも、今思えば不思議だけれど、その時の自分は本当だった。
そんな記憶を探りたくなるような、そんなお話でした。 -
有頂天家族
- 著者:
- 森見 登美彦/著
これは京都に住む狸の家族のお話。
ただし、ただの狸じゃありません。
狸の代表を決める選挙があったり、
父狸の死には悲しい真相があったり、
恋だってややこしく三角形をしています。
けれど、壮大な家族の愛に勝るものは何もない!!
面白おかしく生きる狸の世界をのぞいてみましょう! -
黄色い目の魚
- 著者:
- 佐藤 多佳子/著
美術の授業で正面の相手の顔を描く。
みのりの絵を描く木島の絵はとても上手い。
なのに木島は「全然違うね」と悔しがる。
何度も何度も繰り返しみのりを描く木島。
スケッチブックがうまる頃には…
スマホやSNSがない頃の恋の話。
スマホがないなんて考えられない時代になってしまったからこそ
物語の中で今とは違う恋の形を味わってみませんか? -
いつでも会える
- 著者:
- 菊田 まりこ/著・装丁
シロはみきちゃんが大好き。
シロのみきちゃんへの愛情が
みきちゃんのシロへのやさしさが
この小さな本に詰まっています。
個人的な話になってしまいますが、
私はこの本に影響をうけて
高校生の時絵本を作っちゃったりしました。 -
ふしぎなおきゃく
- 著者:
- 肥田 美代子/作 岡本 颯子/絵
ラーメン屋、「とんちんけん」にひとくちだけ食べてかえっていくおきゃくがいました。
来る日も来る日もひとくちしか食べないおきゃくをふしぎに思った店主は・・・。
幼少のころから面白いなと思っていた一冊で
久しぶりに読んでも惹かれるストーリーだと感じました。
ラーメン好きの方にはいっそうおすすめの本です。 -
千年後の百人一首
- 著者:
- 清川 あさみ/著 最果 タヒ/著
想像してみて下さい。
広いカンバスの一角に描かれた一組の男女。
余白に囲まれたその絵に詳細な説明はなく、きっと私たちはその男女の服装や仕草、二人の間にある距離や視線の先にあるものからいろいろなイメージを膨らませるでしょう。
限られた文字数で書かれた和歌に、目には見えなくても同じような余白があると私は感じました。
この本では、最果タヒさんと清川あさみさんによる現代の言葉と絵で、今までとは違った新たな百人一首が表現されています。
最果タヒさんの現代語訳に共感できる人、できない人。それは人それぞれだと思います。
これまで和歌にはあまり触れてこなかった私ですが、この本で和歌という短い文章が持つ余白の美しさと奥深さを知ることができました。
原文と現代語訳、そして自分の頭の中に描いたイメージを比べながら読んでいただければと思います。